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ダブルのルーツに「今は感謝」 100mで世界一をめざすため、今は砲丸投げに邁進
- 大阪府千早赤阪村で3歳から育ったチディ江莉花選手(千早赤阪村立中学校2年)は、陸上競技で砲丸投げや短距離の100m、走高跳びなどに取り組むアスリートです。成長期でスランプに陥る時期もありましたが、自分の体を深く知る機会にもなり、飛躍につなげようと日々競技に向き合っています。
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シェリーアン・フレイザープライス選手のように
- 日本人の母とナイジェリア人の父の間に生まれたチディ選手。幼い頃から自然いっぱいの地元で遊び、3歳のころから保育園の行事で家からほど近い金剛山にハイキングに行くといった恵まれた環境の中、体を動かすことが大好きでした。小学校の頃はポールスポーツやハンドボール、体操などをしていましたが、中学校に入るタイミングで先輩に陸上競技部に誘ってもらい、仮入部。体験してみるとすごく楽しくて、陸上をもっとやってみたいと思ったといいます。
顧問の田中洋平先生は、大阪府の中でも陸上の強豪・河南町立中学校から転任し、地域の陸上クラブ「河南陸上クラブ」の代表、そして大阪中体連陸上競技部の強化部長です。さらにチディ選手が入学するタイミングで、周辺地域の学校が連携して行なう地域クラブ活動の取り組みがスタート。学校の部活は部員10人ほどと小規模ですが、この取り組みによって走ること以外にも投擲(とうてき)、跳躍などさまざまな種目に取り組めるようになりました。
まだまだ体ができあがっていない時期なので、さまざまな競技をやったほうがいいという先生の方針もあり、砲丸投げ、走高跳び、100mに取り組んでいるチディ選手。2022年は走高跳びで1m35を跳び、府の中学校総合体育大会で3位に入りました。砲丸投げのベストは10m72で、これは22年度、全国の中学1年生の中でランキング4位でした。 -
- ▲さまざまな競技を経験するべきだという方針のもと、今は砲丸投げに取り組んでいます
- すでに実績を残しているチディ選手ですが、「一番やりたいのは100mです」と言い切ります。22年のオレゴン世界陸上100mで金メダルを取ったシェリーアン・フレイザープライス選手の走りを見たときに、「めっちゃかっこいい!」と衝撃を受けました。「自分の理想の選手だと思いました。走るのも好きなので、将来的には100mで世界で戦える選手になりたいです」と夢を語ります。
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自分だけでなく、地元の良さをみんなに知ってもらいたい
- 千早赤阪村は奈良県との府県境にあり、山に囲まれた自然たっぷりの村です。総人口は5000人足らずで「コンビニやビルなどもないです」とチディ選手。人口が少ないがゆえに、みんなが知り合いのようなところがあり、地元のおじいちゃん、おばあちゃんはいつも声をかけてくれます。「あとは、給食がめっちゃおいしいです」。地元の新鮮な食材をふんだんに使った給食は、みんなの楽しみの一つです。
明治安田生命の地元アスリート応援プログラムは、母親の仕事関係の知り合いから紹介されました。「地元を知ってもらい、地元の方に応援してもらう」というプログラムの趣旨に親子ともども共感し、応募を決めたと話します。「自分を選手として応援してもらうだけじゃなく、地元のことも知ってもらえるところがいいなと思いました」。自分が活躍し、大好きな地元のことをもっと知ってほしいという気持ちも持っています。 -
- ▲よくお参りに行く地元の神社の鳥居の前でジャンプ
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成長期にスランプ→自分の体を知る機会に
- 楽しく競技に取り組んでいるチディ選手ですが、1年生の後半シーズンは成長期で体が変わり、スランプに陥ってしまいました。母親からの「思い切って休みなさい」というアドバイスを受け、整体院で筋肉をほぐしてもらい、ストレッチを学んで自分の体を深く知るようになりました。練習量を減らして休む以外にも、通っている体操クラブで陸上競技と異なる動きにも積極的に取り組みました。「そのおかげで今はスランプを抜けられました」
ナイジェリアにルーツを持つダブルということもあり、自分の筋肉のつき方が周りの選手とは異なることも知りました。具体的には、筋肉がつきやすい下半身からのパワーを受け止めるため、上半身も意識的にしっかり鍛えていかないと、バランスが悪くなってしまうことなどです。以前はダブルであることがコンプレックスだったというチディ選手ですが、今は自分の体を「強み」と捉えていて、「今は感謝しています」と明るく話します。 -
- ▲成長期のスランプが、自分の体を知る機会にもなりました
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砲丸投げで好結果を残し、夢の100mに進みたい
- 23年の目標はまず、砲丸投げに集中することです。5月の木南記念に出場しましたが、緊張して自分の思い通りに投げられず、「砲丸投げで目標を達成するための生活ができていなかったと気づくことができました」。勉強にもしっかり取り組み、家でもシェリーアン・フレイザープライス選手の筋力トレーニング動画を見ながらトレーニングをする、と気持ちを新たにしました。
「今年は近畿大会や全国大会など、大きな大会で1位を取りたいと思っています。今砲丸投げの自己ベストは12m13ですが、確実に15mを狙っていきたいと思っています」。そして好結果を残し、中学3年からは目標とする100mのトレーニングに移行したいと計画しています。将来的には、32年にブリスベンで開催される予定の世界最高峰の大会で、日本女子初の100m金メダルを獲得したい、と大きく目標を掲げます。 -
- ▲将来的には短距離に専念し、女子100mで世界一をめざします
- プログラムでの支援金は、陸上に関する用具に充てるほか、高校に進学してから短期留学という形でスプリントキャンプに参加するための資金にしたいと考えています。「周りの人たちが自分を受け入れてくれたから、自分は頑張れたんだなと思っています。そういう思いを他のダブルの子にも持ってもらえたらうれしいです。地元の方々が自分の頑張る姿を見て幸せになってくれたら、すごくうれしいです」。自らのルーツ、そして地元を誇りに感じ、チディ選手はしっかりと目標を見定めています。
(取材・制作:4years.) - ================
2024年2月29日をもちましてクラウドファンディングを終了いたしました。
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■支援者一覧(順不同、敬、称略)
中村千恵子、COLORS、神並弘枝、class one(クラスワン)、コタキ株式会社、金井 純兵、手の病院サロン、伊井教光、えりか応援隊、千早赤阪村 栗山、髙木 香織、津田みゆき、藤代智春、田中 英俊、hiro