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生まれ育った大阪の雪のない街から世界の雪山の頂点をめざす!
- 武庫川女子大学に通う大学4年生の藤木日菜選手が挑戦しているのは、約200mのコブ斜面を滑りながら2種類のエアを行ない、ターンの技術、コブ、エア(空中技)の技術、滑降のスピードを競うフリースタイルの人気競技「モーグル」。世界の頂点をめざし、ワールドカップの出場権獲得に向け一歩一歩着実に成長を続けています。
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四つ上の兄の影響で始めたスキー
- 藤木選手は、国内トップ選手の一人で「『ひなちゃん』がいい」と名前をつけてくれた4つ上の兄の豪心(ごうしん)選手の影響もあり、3歳で初めてスキーを滑りました。「小学生くらいまでは毎年、年末に斑尾(まだらお)高原にファミリースキーに行くくらいでしたが、単純に楽しかったです」
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- ▲兄の豪心さん(右)も地元でモーグル選手として活躍中。藤木選手が阪南市にとどまるのには兄の存在もあります
- 中学生時代から本格的に競技としてモーグルと向き合いはじめた藤木選手。冬季は毎週末、片道6、7時間かけて父親の運転で兄と一緒に長野県白馬村方面に向かい、雪上練習を重ねました。「雪の中は寒いし、転ぶのは怖いし、嫌になることもあった」と苦笑いを浮かべつつ、「ターンやスピード、エアの技術など、スキーのすべての技術が必要なモーグルはどのスポーツより迫力があってカッコいいと思っています」と言うように、その魅力にひき込まれていきました。
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国際大会で痛感した世界の壁
- 2021年にはジュニアの日本代表に初選出され、ロシアで開催されたジュニア世界選手権に出場しますが、9位という不本意な結果で終わってしまいます。3位に入賞したロシア選手は藤木選手の一つ年下ながら、「体の強さや技術が本当にすごくて。ターンの技術などをもっと上げないといけないと感じました」と、世界へ挑む課題を突きつけられました。
同時に、海外の雪質やコブに戸惑うのも初めての経験でした。「日本は(ロシアと比較すると)暖かいので雪は軟らかいけれど、海外の雪は硬くて。コブも日本は下に掘られるように作られているんですけれど、ロシアでは平らなところにコブが乗っている感じの初めてみる形状のものでした」
藤木選手は、その大会で見事に適応して優勝した年下の日本選手の滑りからも、収穫を得たと振り返ります。「雪質やコースに合わせてすぐに滑りを変えていました。そういった経験の差も感じた大会でした」
世界の壁を痛感した藤木選手はそれ以降、海外遠征を積極的に行なうようになりました。23年は9月の頭にオーストラリアの大会に出場を予定しており、夏に滑ることはなかなかできないので少し前から入って練習も行なう予定です。
海外での経験が必要だと痛感した頃、藤木選手は交付を受けていた阪南市の「青少年スポーツ奨励金交付制度」の関係者から、明治安田生命の「地元アスリート応援プログラム」の存在を知ります。「これまでは家族に支えてもらって競技を続けてきたのですが、できれば自分の力でやっていきたいと思いましたし、地元を大切にするという部分にも共感できました」とプログラムへの応募を決意しました。 -
オフシーズンは地元でトレーニングに励む
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- ▲23年最初の大会では2日連続で優勝。幸先のいいスタートを切れたが……
- 22年3月に行なわれた全日本選手権では、ワールドカップや世界最高峰の大会の経験者が9名出場するなかで6位に入賞しました。
そして23年の最初の大会、2日間、2戦を争う埼玉県モーグル選手権では2戦ともに優勝という最高の形で開幕を迎え、3月には2位以内になればナショナルチームに入ることができる全日本選手権に挑みました。
結果は4位。同大会では自身最高順位でしたが、納得のいく結果とはなりませんでした。
「どうしても2位以内に入りたいと思っていて、出場メンバーのなかでは、これまで2位以内に入れたこともあったので、自分の中では納得できない結果でした。昨年は6位に入れると思っていなかったので、自分ができる力を出そうと思ってやったら結果がついてきた。今回、どんどん上がめざせるようになってきたらそこを追い求めてしまい、思うより力が入ってしまって結果がでなかった」
また、埼玉県選手権では成功した、縦1回、横1回を合わせた3D系の技「コーク720」が肝心の全日本選手権ではうまくいかなかった。「コースによっては技が成功する確率が低くて、その技がどこででも使えるように、もっと完成度を高めていくのがオフの課題です」
23年のオフシーズンは実家から武庫川女子大に通学する傍ら、週に1度、阪南市の体育施設でトランポリンを利用して得意なエア(ジャンプ)の感覚などを磨きます。さらに、週に2、3回、大東市の「大阪ウォータージャンプ O-air」で技の難易度を高めるなど、あくまで地元大阪で強化を続ける姿勢を貫いています。
実は大学を選ぶ際に北海道に行くことも考えたという藤木選手。「地元が好きっていうのが一番にあるんですけど、ここにいてもトレーニングはできます。冬場は北海道に遠征することが多いのですが関空(関西国際空港)も近い。夏場のウォータージャンプも大阪の方ができる期間も長い。そして、地元で一緒にモーグルをやっている兄がいて、一番近くで教えてもらえるのも大きいですね」 -
阪南市から取材の依頼も、地元で注目度もアップ
- 藤木選手は阪南市について、「海もあって山もあって大阪府内とは思えないくらい自然が多い」と語ります。プライベートでは、自然の遊びが好きな父親の影響で、中学時代から友人と学校帰りに堤防や消波ブロックの上からので釣りを楽しみ、現在でも自転車で5分くらいのところで釣りを楽しみ、リフレッシュするなど、地元が好きでたまらないそうです。
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- ▲リラックスできる場所が近くにあるのも地元の良さ。釣れなくても気分は休まるそうです
- 22年に「地元アスリート応援プログラム」に参加したことで、うれしい再会もありました。幼稚園の頃の先生から支援を受け、応援のメッセージも届きました。「こんなに時間が経っているのに見てくれている。すごくうれしかった」
またウェブやテレビで紹介されたことで、阪南市のシティプロモーション推進課から取材の依頼もありました。「阪南市で頑張っている人を取り上げて、毎月YouTubeで配信しているみたいで、出演してもらいたいと声をかけられました」
ますます地元での注目も高まる藤木選手。「雪のないこの阪南市からでも、冬のスポーツで世界をめざし頑張っている姿を届けて、少しでもスキーやモーグルという競技を知ってもらいたい。ありがたいことに応援してくれる方がたくさんいるので、その方たちに活躍して恩返しがしたいといつも思っています。私もいろんな方に応援されていることを実感できて心の支えになっています」
4年に1度の国際大会出場という大きな目標に向け、まずは目の前の目標を達成できるよう頑張っている藤木選手。次はどのようなうれしいニュースを地元に届けてくれるのか、期待は高まるばかりです。
(取材・制作:4years.) - ================
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新井康