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悔しさバネに鍛え上げた華麗な足技 愛知・瀬戸から世界めざす
- 愛知県瀬戸市出身の浜川昂大選手は、蹴り技を主体とする格闘技「テコンドー」のアスリートです。2022年の全日本ジュニアテコンドー選手権、21年の全国少年少女選抜テコンドー選手権では、見事に頂点の座に輝きました。目標にしていた大会で優勝を果たすことができ、23年春から高校生になった浜川選手。ただ、学校の環境は変わっても、テコンドーに打ち込む場所はずっと変わっていません。世界の大舞台での活躍を夢みて、幼少期から通い続けている地元の道場で、いまも1日3時間はたっぷりと汗を流しています。
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韓国生まれのテコンドー 海外で経験積み、実力試したい
- テコンドーに魅了されたのは、小学校3年生のときでした。当時、中学生だったいとこに連れられて、愛知県瀬戸市内の「漢塾」瀬戸本部道場を訪れると、テコンドーの華麗でアクロバティックな蹴り技に心を奪われました。すぐに「自分もやりたい」と両親に頼み込み、1週間後には道場でミットを蹴っていたことをいまも忘れていません。熱心に指導にあたってくれた元日本代表の山田勇磨コーチから基礎を教わり、新しい技を覚えるたびにのめり込んでいきました。練習してきた大きな技を決めて、試合に勝ったときの充実感は何物にも代え難いものです。
地元アスリート応援プログラムへの応募を勧めてくれたのも、恩師である山田コーチでした。中学生年代の国内チャンピオンになった浜川選手は、大きな野心を持っています。生まれ育った瀬戸市から世界へ羽ばたくことです。「レベルが高い海外で戦ってみたいんです。そのサポートをしてもらいたく、この制度に応募しました」。テコンドーの本場は発祥の地である韓国であり、強豪選手がいるヨーロッパ。「自分の実力が海外の選手にどこまで通用するのか、試してみたい。自分の目で見て、肌で実感したいと思っています」。先を見据える言葉には力がこもります。 -
- ▲初めて出場した大会で金メダルを獲得し喜ぶ浜川選手(左)。右は浜川選手がテコンドーを始めるきっかけになったいとこ
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稽古帰りは地元の逸品「瀬戸焼そば」の大盛りをぺろり
- 世界に目を向けるようになっても、15年間育ってきた土地には愛着を持っています。道場からの帰り道、尾張瀬戸駅近くの商店街にはよく立ち寄ります。目がないのは、なじみの喫茶店がつくる瀬戸焼そば。「普通の焼きそばとは味が少し違い、タレが甘めですごくおいしいんです」。1人で大盛りをぺろりと食べてしまいます。
まだ中学校を卒業したばかりの高校1年生。当たり前のように瀬戸市で生活していると、地元と他の地域を比べることはできないですが、テコンドーをしていると、あらためて瀬戸出身を意識することはあります。全国大会で優勝したときは、瀬戸市長、愛知県知事を緊張しながら表敬訪問しました。「市の代表、県の代表という自覚が少し芽生えました」と照れくさそうに振り返ります。 -
苦しんだ小学校時代 数年かけて磨いた回転技でチャンピオンに
- 全国の頂点に立つまでの道のりは、平坦ではありませんでした。小学生のころは思うように結果を残せずに思い悩みました。「あの頃は悔しくて、悔しくて……」としみじみ話します。勝つためにはどうすればいいのか、と頭を悩ませました。考え抜いた末の答えは、判定の際により高いポイントが取れる回転技を覚えることでした。「小学校6年生のときに自分からコーチ、先輩たちに『教えてください』とお願いに行きました」。取り組んだのは、後ろ回し蹴り。自宅でも動画を見てイメージトレーニングに励み、来る日も来る日もトライ・アンド・エラーを繰り返し、少しずつ習得していきました。
ようやく成果が出たのは、中学校2年生を迎える前の春。全国少年少女選抜テコンドー選手権にて、試合でポイントをうまく取ることができ、初めて全国制覇を果たします。そして、自信を深めて臨んだ中学校3年時の全日本ジュニアテコンドー選手権。「事実上の決勝」となった準決勝でも、勝利を呼ぶポイントは後ろ回し蹴りで奪いました。決勝は対戦相手が負傷棄権したため不戦勝となり、浜川選手がタイトルを手にしました。
高校生になったいま、瀬戸市の道場で伝授された中段を狙う後ろ回し蹴りは、一番の得意技になっています。もちろん、現状のままで満足しているわけではありません。現在は足をスイッチして蹴る新しい技などに挑戦中です。 -
- ▲22年に開催された第15回全日本ジュニアテコンドー選手権大会で優勝した浜川選手(右)
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世界で戦う地元アスリートからの言葉を胸に、成長を誓う
- 高校での目標は、全日本ジュニアテコンドー選手権の高校生の部で優勝を果たし、シニアの大会でも全国のトップに立つことです。飽くなき向上心を持つ浜川選手は「まだまだスピード、スタミナが不足しているので、もっと強くなりたい」と意気込んでいます。将来の夢は、4年に1度開催される世界最高峰の舞台に立つこと。21年に東京で開催された同大会で、同じ瀬戸市出身で、山田コーチの妹である山田美諭選手が準決勝に進出し、大きな刺激を受けました。
「美諭選手をすごく応援していました。純粋にかっこよかった。あと一歩のところでメダルに届きませんでしたが、次は僕があの場所までたどり着いて、メダルを取りたいと思いました」
大会後には瀬戸市の道場を訪れていた美諭選手と直接顔を合わせる機会があり、サインをもらったといいます。「テコンドーを頑張って続けてね」というメッセージまで添えてもらい、いまでも一生の宝物として自宅に飾っているようです。自ら考えて、壁を乗り越えてきた浜川選手は、さらなる成長を誓っています。
「もっともっと練習して、最終的な目標を達成するために努力していきます。応援していただけるみなさんの力も借り、海外遠征などで国際経験を積みたいです」
大きな夢を追う15歳は、目を輝かせていました。 -
- ▲愛知県瀬戸市内の「漢塾」瀬戸本部道場で日々稽古に励む浜川選手(前列左から3番目)
(取材・制作:4years.) - ================
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