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「愛媛が拠点」にこだわり世界で活躍 壁面のスピード王になる姿を地元の人々に届けたい
- スポーツクライミングで、タイムを競うスピード競技を得意としている大政涼選手は今、立て続けに日本記録を更新して勢いに乗る21歳の若手です。施設や指導者が充実している東京の大学に拠点を移すなど地方を離れる選手が多い中、大政選手は地元・愛媛を拠点に世界の舞台で活躍しています。その原動力となっているのは、地元のクライミングクラブの仲間たち。「僕が活躍することで、下の子たちも続いてこられるはず」と話すアニキの頼もしさに、地元の応援熱も高まりそうです。
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愛媛代表として国体優勝 地元のみんなが喜んでくれたことが今でも忘れられない
- アウトドアが大好きな家族と一緒に、幼いころからキャンプや山登りを楽しんでいたという大政涼選手が、初めてクライミングを体験したのは小学5年生のとき。最初は遊び感覚でジムに通っていましたが、3か月ほどたったある日、大会が開かれていることを知り、がぜん、挑戦する意欲が湧いたといいます。
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- ▲競技を始めた頃の大政選手
そこからはほぼ毎日ジムに通い、めきめきと上達。2018年には国体のリード種目で愛媛代表として優勝を勝ち取り、クラスメートらが喜んでくれたときには、入賞のうれしさに加えて、みんなに応援してもらえることのうれしさもかみしめたといいます。
「高校卒業後に上京するか地元に残るかで悩んだのですが、結果的に松山市内の大学に進学して競技を続ける選択をしたので、今でも地元のみんなに応援してもらっていることを日々実感しています。たとえば散髪に行くたびにお店の人が“大会に向けて調子はどう?”と聞いてくれるし、昔からの知り合いは、昨年、日本代表になれたと報告したときにもすごく喜んでくれました」
たくさんの人の応援もあって国体での優勝以降も結果を出し続け、2022年にはスピード競技で日本新記録を樹立。さらに同年、2度自らの記録を更新して、ワールドワイドな大会の強化選手に選ばれています。 -
地元から世界をめざす選手を応援してくれるプログラムの趣旨に共感した
- もちろん、2023年はさらなる躍進を心に誓っているものの、燃料費の高騰で海外への渡航費が例年の2倍近くに跳ね上がり、海外遠征費の捻出に限界を感じていたといいます。そんなとき、所属しているクラブチームのコーチから、明治安田生命「地元アスリート応援プログラム」のことを聞き、応募を即決しました。
「高校卒業後は関東の大学に進学する人も多いなか、地元・松山から世界をめざす道を選んだこともあって、プログラムの趣旨に共感したのも大きな理由です。松山は市の中心部は都会ですが、少し離れると豊かな自然も広がっているすごくいい街なので、僕がプログラムに参加することで、この街の魅力を多くの人に知ってもらえるとうれしいと感じました」
地元を愛する大政選手が特にお気に入りなのが、豊富な温泉施設です。「全国的にも知られている道後温泉のあたりは昔ながらの雰囲気が残っていて落ち着きます。試合前には温泉につかることで筋肉の疲れが取れていくのを実感しています」
愛媛と言えば、ミカンも外せません。「愛媛ではミカンは品種が豊富で年中スーパーに並んでいますし、買わなくても近所の方からいただいたりもします。僕が大好きな『紅まどんな』は甘みが強くてゼリーのような食感が最高です。愛媛にきたらぜひ食べてほしいです」
競技環境も、自身にはぴったりだと感じています。幼いころから通うジムが近くにあるのはもちろん、近隣の西条市には、スピード競技用の壁を有した施設もあります。地元のチーム「スピードスターズ459」に所属しており、仲間たちと切磋琢磨してきました。「今は僕がリーダー的な存在。僕が活躍すれば、下の子たちもついてきてくれるはず」。仲間たちの存在がいつも背中を押してくれています。
「コーチにも恵まれているし、本当に周りの方々のサポートがあってここまでくることができたと思っています」。コーチには、うまくいかないときに悩みを聞いてもらうこともあると明かしますが、これまでの競技人生のなかでは、精神的につらくなかなか立ち直れなかったこともあるのだとか。 -
地元のみんなに喜んでもらうためにも、世界に視野を広げることが大切だと気づいた
- 「つらいことはしょっちゅうありますが、一番は、地元で開かれた2017年の愛媛国体に出場できなかったことです。この競技をはじめた当初の目標が愛媛国体に出ることだったので、それがかなわなかったことで、どこをめざしたらいいかわからなくなったんです」
一時は競技をやめることまで考えたという大政選手ですが、コーチをはじめとする周りの人たちが寄り添ってくれたことで、再び前を向いて歩み出します。
「落ち込んでいたときに、世界で活躍している選手の話などを聞いて、自分の視野がいかに狭かったかを知ったんです。国内大会にばかり目を向けて一喜一憂しているのではなく、自分も世界で戦える選手になりたい! と強く思いました」
そこからは、持ち前の粘り強さで黙々と練習に励み、技術にも磨きをかけ続けている大政選手。特に、得意とするスピード競技では結果を出したいと、両手を離して次のホールドに飛びつく「ランジ」の練習や、強い体作りのための自重トレーニングに力を入れていきました。また、練習で壁を登る際には必ずビデオを撮って、自分の動きを客観視。世界記録を持っているインドネシア人選手をはじめとするトップレベルの選手の映像と見比べて、「自分は身体の軸がぶれているから、左右に動く無駄な時間を削って垂直に上がることでスピードを縮める必要がある」と分析しています。 -
- ▲2022年の世界大学スポーツクライミング選手権大会で優勝した大政選手 © Danijel Jovanovic Photography
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23年中に世界で10位以内に入り、25年までに世界記録を塗り替えたい
- 着実に改善していくことで自身の記録を縮め、世界記録の4秒9に到達することは、大政選手にとって大きな目標。「今すぐにでも記録を塗り替えたい気持ちですが、記録更新のためには、脚力も壁を引く力ももっと鍛えることが必要なので、現在はトレーナーについてもらって体を鍛えています」。
25年までには現在の世界記録を塗り替えたいと目標を語ってくれた大政選手ですが、まず23年は7月までのワールドカップ5大会すべてに出場して経験を積み、最高の状態で8月の世界選手権に挑むことに加え、年内にタイムを5秒2まで縮めて、ワールドタイムランキング10位以内にランクインすることを短期目標として掲げています。そのためにも多額の遠征資金が必要になるといいます。
「首都圏からではなく地方からでも世界をめざせることを証明するためにも、このプログラムを通して僕のことを応援してくれるみなさんに、世界選手権で結果を出す姿を見届けてほしいです」
(取材・制作:4years.)
※ヘッダー写真 ©あべいち
※プロフィール写真 ©WINAGENT - ================
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