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“攻防一体”のボクシングで兄もなしえなかったアマチュア世界一をめざす!
- 千葉県出身の東洋大学3年生、堤麗斗選手は、日本のアマチュアボクシング界が期待を寄せるボクサーの一人です。2021年4月、世界ユース選手権ライト級で金メダルを獲得。日本勢の優勝は、プロボクサーで、16年大会でフライ級を制した兄・駿斗(はやと)選手以来であり、兄弟でユース世界一をつかみました。
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兄・駿斗選手に続け! ボクシング界期待のホープ
- 兄と同じ名門・習志野高校で1年生から主要な全国大会を制覇。2年生までに高校5冠(インターハイ2回、国体2回、選抜大会1回)を達成しました。兄の6冠を超える8冠をめざしていましたが、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、3大会が全て中止。やり切れない思いを抱えながらも、20年は世界ユースを目標に練習を継続し、最上の結果を得ることができました。
「高校時代からめざしてきた大会で成果を出すことができたのは、うれしかったですね。思い通りに自分のボクシングができて、やってきたことが間違いなかったと再確認できました」
さらに21年には、世界選手権にも出場しました。初めてのシニアの大会で、階級も一つ落としてフェザー級です。しかし、そこで待っていたのがユースとシニアの大きな差です。ボクシングを、思い通りにさせてもらえないまま敗退を喫します。
「シニアの想定はしてきたのですが、初めて体感したうえに、想像の上をいっていた感じでした。階級を落としたということもあったかもしれませんが、やはりユースとシニアの差が、一番大きかったですね。その意味では、負けたけど得るものは大きかったと思います」 -
スパーリング相手を求めてラスベガスへ
- そして22年、堤選手はコロナ禍で実戦練習もままならない日本を離れ、5月にラスベガスに遠征。3週間ほど現地に滞在し、本場のボクサーたちとスパーリングを繰り返したそうです。
「日本選手との実戦トレーニングだと、自分の弱点が明らかになるようなトレーニングがなかなかできなかったのですが、アメリカには自分より強い選手がたくさんいて、そういう選手とやることで、自分の課題が明らかになったところが、その後の成長につながったと思います」
堤選手がもっとも課題だと感じたのが、ディフェンス能力です。
「アメリカの選手は、誰もがディフェンス能力が非常に高く、そこでの差が(スパーリングで)出てしまったと思います。“攻防一体”というのですが、そこが自分には足りていませんでした。攻めは得意ですが、守るべきところでパンチをもらってしまう。攻撃しながらも、ディフェンスを意識するという部分が自分にはあまりなかったので、そこを課題に感じました」
自身の課題が明らかになったことで、堤選手はその後の練習や試合にも自信を持って臨むことができたといいます。実際、同年6月から行なわれた関東大学リーグ戦では、フェザー級代表として2勝。8月の全日本大学ボクシング王座決定戦では、ライト級代表として圧勝をおさめ、最優秀選手賞も獲得しました。
ただ残念なことに、出場が決まっていた11月のアジア選手権を、体調不良のために欠場。さらに、翌23年2月のアジア競技大会出場のための選考会も欠場しました。特にアジア競技大会で上位に入れば、目標としている24年の世界最高峰の大会に近づくはずでしたので、悔しい思いもあったことでしょう。とはいえ、まだチャンスがなくなったわけではありません。
「2023年は、11月に日本選手権が開催されるので、フェザー級で日本一になるのが目標です」と堤選手。目標としている24年の世界大会に向けて、攻防一体となった堤選手のボクシングに期待したいところです。 -
「兄ができなかったことを成し遂げていきたい」
- 堤選手は生まれも育ちも千葉です。小学5年生の時に極真空手から転向し、ずっと同じ地域でボクシングに打ち込んできました。千葉市のボクシングジムに通いながら、U-15(15歳以下)全国大会では小学5年生から中学2年生まで4連覇(認定優勝含む)。さらに地元・千葉にある習志野高校へ進学し、高校の全タイトルを総なめにするなど、兄の駿斗選手と同様、圧倒的な実績を残してきました。ただそれは、自分の力と才能だけでつかんだものではないと、堤選手はいいます。
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- ▲ボクシングに転向した小5の時の堤麗斗選手(左)と兄・駿斗選手
ボクシングを始めた時から強い兄の背中を追いかけてきました。空手から転向したばかりのころに苦戦する姿も、そこから努力してはい上がっていく姿も、一番近い場所でずっと見てきました。「兄から学んだことは努力する大切さです。僕ももっと努力しないといけないと思いました」
兄は尊敬すべき存在ではありますが、ライバルでもあります。初めてグローブをつけたジムでも、名門の習志野高校に入学した時も、東洋大に進んでからも、周囲からは「堤駿斗の弟」と言われ続け、ずっと意識してきたのです。
「正直、プレッシャーはありました。特に高校1年時のインターハイは、兄が負けていたので『絶対に勝たないといけない』と思っていました。そこで勝てたときはうれしかったですね。習志野高校の関茂峰和(せきも・みねかず)監督から『駿斗と麗斗は別だから』と声をかけてもらい、気持ちが楽になったのも大きかったです」
兄と比較されることは多いですが、むしろこれからも切磋琢磨(せっさたくま)していくつもりです。
「今後は兄ができなかったことを成し遂げていきたいですね。今はまだ、兄の方が一枚も二枚も上手ですが、将来的には超えていきたいと思います」
兄もなしえていない4年に1度の舞台への出場。そこに、堤選手のモチベーションの源泉があります。 -
めざすのは唯一無二であるアマチュアの王者
- 「今後の大会で結果を出すためには、取り組んでいる様々なトレーニングを競技につなげる技術が必要。日々の時間を大切にしながら、少しでも目標達成に近づけるように努力を続けていきます」
フィジカルの強化という意味では、個人でフィジカルトレーナーのもとに通い、フィジカルの強化とともに、それらを自らの動きやパンチ力に最大限生かすことができるよう、研究を重ねているといいます。クラウドファンディングで集まった支援金は、こうしたフィジカル強化のための資金や、強い選手に手合わせしてもらうための遠征費に充てる予定です。 -
- ▲24年の世界大会に出場するためには、日本選手権優勝はマストの条件に近い。堤選手にとっては、負けられない戦いとなります
23年、めざすのは唯一無二である日本のアマチュアの王者です。それができないなら、24年のパリも、当然ながら遠のくことになります。
「地元の習志野市長様をはじめ、高校の先生方や多くの方たちに応援していただいたことは、卒業した今も感謝しています。自分がボクシングで活躍することで習志野市の皆様に恩返しをしたいと思っています。また、僕らは支援していただいた分だけ、結果を残さないといけないと思っています。希望を託してくれた人たちに、常に感謝の気持ちを持ち、目標に向かって頑張っていきたいです」
(取材・制作:4years.) - ================
2024年2月29日をもちましてクラウドファンディングを終了いたしました。
ご支援をいただきまして、本当にありがとうございました!
■支援者一覧(順不同、敬称略)
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