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圧倒的な「高さ」武器に世界の頂点へ トランポリンを人気競技にしたい
- トランポリンの日本代表で、2021年世界選手権では団体銀メダルにも貢献した海野大透(うんのひろと)選手(静岡県静岡市出身)は、高いジャンプから繰り出す多彩な技を武器に次世代のエースと期待されています。自宅がトランポリン教室という環境で幼い頃から競技に親しんできた海野選手。高校と大学では学校に練習拠点を移していましたが、22年春に大学を卒業し地元・静岡で社会人になったのを機に、再び慣れ親しんだ自宅隣の練習場に戻りました。現在は静岡産業大学クラブに所属し、世界へ挑んでいます。どこか地味なイメージのあるトランポリンですが、エンターテインメント性を高めて人気競技にしたいと考えています。
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実家がトランポリン教室 父の指導受け幼い頃から競技に没頭
- 23年5月に開かれた全日本トランポリン競技年齢別選手権大会で3位入賞を果たした海野大透選手が、トランポリンに初めて乗ったのは3歳の頃でした。実家で祖母が「静岡トランポリンクラブ」を経営していたこともあり、「どちらかといえばレクリエーションの感覚だったかもしれません」と本人は振り返りつつも「ちょっと飛ぶだけでも世界が変わるのが気持ちよかった」と、トランポリンに魅了されていきます。
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- ▲トランポリンを始めた頃の海野選手
平日は放課後に2~4時間、土日は6~7時間、父親の大輔さんの指導を受け技術を磨いていきます。その厳しい練習で海野選手が手に入れた武器はジャンプの滞空時間と高さでした。多くの選手は1本のジャンプでの平均滞空時間が20~2.1秒とされていますが、海野選手の場合は2.2秒を超えます。
トランポリンは10回の連続ジャンプで技を組み合わせていく競技のため、一つの演技で空中にいる時間が他の選手より計1~2秒も長くなることになり、高いレベルの技を繰り出すことができます。圧倒的な高さを誇る次世代のエースとして、世界への扉を開いていきます。 -
日本平からの夜景、安倍川の川音……自然に囲まれた静岡が好き
- 明治安田生命「地元アスリート応援プログラム」は静岡県藤枝市の治療院「エムエスマイスター」の社長と、松林工業薬品の松林隆一会長から紹介を受けました。スポーツが盛んな地元・静岡市へ貢献できるというプログラムの目的に共感したことに加え、静岡県には清水エスパルス、ジュビロ磐田、藤枝MYFC、アスルクラロ沼津という四つのJリーグチームがありますが、Jリーグのタイトルパートナーである明治安田生命の社名を「たくさんのスポーツイベントや試合で見てきました」と親近感を抱いています。
静岡から世界へ。その思い誰よりも強いものがありますが、逆に遠征などから地元に帰ってくると「地元の良さを確認できる」と海野選手。帰宅後は必ずドライブに出かけ、景勝地・日本平から静岡市の夜景を見下ろす時間がもっともリラックスできるそうです。
地元を流れる安倍川もお気に入りの場所です。2日に1度は30分間、川の周辺をランニングしています。「水が流れる音と風が気持ち良いですし、名物の安倍川餅もおいしいですよ。静岡市は海も川も山も近く、自然に囲まれた街なので好きです。ぜひみなさんに来て欲しいです」 -
大怪我で競技を離れ気づいたトランポリン愛
- そんなトランポリン愛と地元愛にあふれた海野選手ですが、一度だけ、競技から離れたことがありました。高校1年生の夏、着地に失敗し両脚の脛骨骨端線損傷という大怪我を負います。治療とリハビリに3ヶ月。「当時、反抗期だったと思うんです。父親とけんかしたり、付き合っていた彼女もいたりして、そっちばっかりに夢中になってしまって……」とさらに3カ月、合計半年もの期間、トランポリンに乗らない毎日を過ごします。
それでも徐々に湧き上がるのは跳ぶことへの渇望でした。「跳ぶっていう毎日の習慣がなくなって、遊びに出かけてもどこか楽しくなくて。結局、トランポリンに戻りました。やっぱり新しい技ができたり、自分で思い通りに動かせたりする感覚は気持ちいいんです」
浜松修学舎高校から静岡産業大学に進学する頃から国際大会にも出場するようになり、21年の世界選手権では団体銀メダルに。大学を卒業した22年には地元企業の株式会社サンに就職。働きながらも競技を継続し、22年10月の全日本トランポリン競技選手権で準優勝、川崎ジャパンオープンでは優勝という大きな結果を残しました。 -
- ▲22年川崎ジャパンオープンで優勝した海野選手
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トランポリンをエンターテインメントに
- 23年5月にあったトランポリン競技年齢別選手権大会は日本一を決める大会にもかかわらず、YouTube配信のリアルタイム視聴者は300人に届きませんでした。海野選手自身、まだまだトランポリンはマイナー競技だと感じています。
「人にトランポリン競技をやっていると話した時に、『あれって跳んでるだけでしょ』って言われるのは悲しいです」と苦笑いを浮かべますが、「ジャンプは喜びの表現」とも語ります。弾むという行為で人は楽しい気持ちになったりうれしさを他者に伝えたりしますが、そのポジティブな感情を持ったトランポリン競技の面白さ、素晴らしさを多くの人に知ってほしいと願っています。 -
- ▲演技で見る人を驚かせるだけでなく、将来は大会の演出もエンタメ化したいと話す
そのためにも、トランポリンの大会を単なる競技発表の場という今の性格にとどまらず、スポーツエンターテインメントの舞台に変えていけるよう、見せ方や演出などを工夫していきたいと目を輝かせます。選手として見る人を驚かせる演技をするだけでなく、大会そのものの見せ方まで変えていく――。自身のキャリアを通して、そんな大きな目標を抱いています。 -
スポーツに熱い街・静岡に恩返しを
- トランポリンは器具さえあれば誰でもトライできる気軽で身近な競技である半面、同じ環境でトレーニングを続けることが多く、集中力や緊張感を鍛えるのが難しい側面もあります。
「どれだけ試合を想定して練習できるかは大切ですね。地元を拠点にしつつ、外部での練習も積みたいです」。そのためには東京都や三重県、石川県などにある、いわゆる“アウェー”のトランポリンクラブで合宿を張り、様々な情報や刺激を得る必要があります。支援を受け、そのための交通費や滞在費に充てたいと考えています。
「静岡市って応援してくれる人が本当に多い、スポーツに対しての理解がある街だと感じています。成績や行動でお世話になった方に恩返しをしたい。そう思っています」。誰よりも高いジャンプと志で、海野選手は今日も跳び続けます。
(取材・制作:4years.) - ================
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