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ブレイキンが盛んな石川で光り輝く「Bガール」の新星
- 全国的に見てもブレイキンが盛んだと言われているエリア、石川県金沢市の、村上結菜選手(金沢桜丘高校3年)がいま注目を集めています。2022年にはブレイカーの誰もが目標にする「Red Bull BC One Japan final」でベスト8、23年2月の全日本ブレイキン選手権でもベスト8となり強化選手にも選出されました。
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自分にとってもまさかの出来事
- 22年は村上選手にとって躍進の年となりました。7月のJDSFブレイキンブロック選手権中部北陸ブロックで優勝すると、9月の「THE JAM in下関」でも優勝。そして同9月にベスト8に入った大会が「Red Bull BC One Japan Final」でした。
「自分にとって大きかったのが、9月にあった『Red Bull BC One Japan Final』の大会。この世界大会(Red Bull BC One World Final)は4年に1度の国際大会と同じくらい、みんなが目標にしています。国内の前日予選で優勝できて、次の日のJapan Final(日本予選)に出場できたことは、自分にとってまさかの出来事で、これまでで一番の成績が出たっ! て感じなんです」
また、その年の1月に行なわれた全日本ブレイキン選手権でもベスト8と健闘しましたが、指定条件を満たせず、強化選手には選ばれませんでした。ですが、条件がジュニアとオープンの各ベスト8となった23年2月の同選手権で村上選手はベスト8に入り、みごと強化選手となりました。 -
- ▲優勝した「THE JAM in下関」で華麗な技を披露する村上選手(写真提供・FEworks)
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ブレイキンの楽しさがヒップホップダンスを超えた瞬間
- 村上選手がダンスを始めたのは5歳の頃。ブレイキンではなく、ヒップホップダンスが原点でした。ヒップホップでも持ち前のセンスで数々のコンテストで優勝。ヒップホップの教室では、先生のアシスタントとして小さな子どもたちのレッスンを任されるほどでした。
実は、小学校に入学した頃に、友達の誘いでブレイキンのレッスンに参加した時期もありましたが、ヒップホップに夢中だったので長続きはしませんでした。
6年生のあるとき、ダンスの先生から「(ブレイキンを)ちょっと踊ってみない?」と声をかけられて教わった技に挑戦したところ、ヒップホップでは味わったことのない高揚感で胸がいっぱいに。それをきっかけにすっかりブレイキンにハマり、徐々に挑戦のハードルを上げていきます。
「最初のターニングポイントは、18年に参加した『DANCE ALIVE』。KIDS関西予選でベスト8に勝ち上がり、世界でも活躍しているTSUKKI君と対戦したんですけど、奇跡的に勝つことができたんです。同じ年の12月には、台湾で開催された『Taipei Bboy City』という大会のキッズ部門で準優勝。自分にとって初めての海外遠征でした。そのときも決勝の相手がTSUKKI君で、負けてしまったんですが、お客さんの盛り上がりがすごくて日本との違いを肌で感じることができました」 -
自分が結果を出すことで金沢を盛り上げたい
- 翌19年にはオーストラリアで開催された「Destructive Steps」でも入賞。自分のダンスが海外でも通用することを確信した村上選手は、さらに大きな夢を描くようになります。世界最高峰の1 on 1ブレイキン・バトル・トーナメント「Red Bull BC One」での優勝、そして4年に1度の国際大会で優勝することです。
「2020年冬にブレイキンが(パリの国際大会での)競技に決まった瞬間は本当にびっくりしました。そんな大舞台は自分には無縁の世界だと思っていたけど、ブレイキンを頑張れば夢の大舞台に出られるんだ!と分かって、モチベーションも一気に高まりました。『Red Bull BC One』も制覇して、世界的に活躍できるダンサーになることが大きな目標です。私の活躍によって、金沢にも注目してもらえたらという思いもあります」
実際、台湾のイベントで快挙を成し遂げた際は、新聞にも大きく取り上げられ、学校の先生や友達からも「見たよ」と声をかけてもらえたことが、村上選手にはとてもうれしいことでした。「金沢は本当に自慢できることがたくさんある都市なので、自分の活躍をきっかけにこの土地の魅力にも目を向けてもらえたらいいなと思っています」と胸の内を明かします。そんな金沢について、村上選手は「金沢駅はめちゃくちゃキレイだし、金沢市民芸術村もフォトジェニック。食べものは、とにかくお魚がおいしいから食べに来てほしいですね」と教えてくれました。
また、金沢を拠点に国内外で活躍する村上選手が、気持ちを切り替える場所として教えてくれたのが金沢駅前の「鼓門(つづみもん)」です。「海外遠征が終わって、駅着いて改札出て、お母さんが迎えに来ているのでそこまで行くときに鼓門が見える。それが地元に帰ってきた瞬間。出発するときも、鼓門を見て『頑張るぞ!』って気合が入りますね」
今回、2度目の参加となりますが、明治安田生命「地元アスリート応援プログラム」に初めて応募したのも、金沢のことを多くの人々に知ってもらいたい、地元の人々に応援されるアスリートになりたい、という思いがあってのことでした。初めてプログラムに応募したのは、師事している草野真澄先生が村上選手を推薦してくれたことがきっかけでした。そのときは、「まさか自分が支援してもらえるようになるとは!という気持ちもありますが、これからの自分の人生を左右するようなことだと感じています」と語っていました。 -
後悔したくないから、今は全力で結果を出しにいく
- 自身の活躍によって金沢の魅力を多くの人に知ってもらうためにも、現在は、目下の目標達成に向けて鍛錬に励む日々。クラウドファンディングで集まった資金を使って遠征して大会に出場し、強化選手に選ばれるために必要な実績を積んでいきたい。また、いろいろな指導者からレッスンを受けることで、自分のスキルを鍛えたいと考えています。
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- ▲金沢の観光名所・ひがし茶屋街、「金澤パフェむらはた」のボリューミーなパフェ。地元の魅力も熱心に発信しています
「練習不足を痛感することも多々あります。それもあって、これまでは小さい子たちに(ブレイキンを)教える側として携わらせていただくことも多かったのですが、当面は自分のスキルを上げることに集中したいと考えています。現役の間にできる限り成長することができたら、後々、子どもたちに教えられることもきっと増えるはず。そのためにも、まずは自分が結果を出すことに全力を注いでいきたいです」 -
「地元アスリート応援プログラム」の感動
- 22年、初めて明治安田生命「地元アスリート応援プログラム」に参加した村上選手にとって、驚きの再会やうれしいサプライズもありました。
「私がまだ小学生になる前にお世話になった方から、メッセージとともにご支援をいただきました。その後も、その方が主催のパーティーで踊らせてもらいました。昔お世話になった方から応援していただいて本当にうれしかった。石川を代表するサッカーチーム『ツエーゲン金沢』のイベントにも参加させていただくなど、想像もしなかったつながりが広がりました」
そして、今回もプログラムに参加する村上選手は「まだ始めたばかりの子どもたちなどに、ブレイキンを通していろんな世界が見られる、頑張ればこうなれる。そんなに言えるほどではないですけど、そういう憧れになれたらいいな。いつも応援してくださる方への一番の恩返しは、世界で結果を残すことだと思うので頑張ります」。 -
ダンスをメインに勉強も 学生トップアスリートの悩み
- 村上選手は現在高校3年生、冬には受験が控えています。
「今年の9月くらいになれば、国際大会に挑戦できる可能性があるのかどうかが見えてくる。とりあえずそこまではダンスをメインに頑張りつつ、最低限の勉強はする。正直勉強だけで進学するとなると結構勉強に力を入れないといけない。大学は推薦でいけたら一番ベストかなと思っています」
学生トップアスリートならではの悩みも抱く村上選手。国際大会に向けて、後悔のないよう精一杯ブレイキンに取り組む、大切な年になりそうです。
金沢から世界へ、地元の人々と、将来ダンサーをめざす多くの子どもたちからの熱い視線を受けて頑張る村上選手の活躍を見逃せません。
(取材・制作:4years.)
※ヘッダー、プロフィール画像 提供:FEworks